こんにちは、培養室です。
不妊治療はタイミング療法から始まり人工授精、体外受精とより高度な治療へと進むことがあります。体外受精になると、【卵巣刺激】→【採卵】→【受精】→【胚培養】→【胚移植】というプロセスを辿り、採血による妊娠判定で治療の結果が分かります。
毎日の自己注射を経て、卵子を体外へ取り出す【採卵】は緊張と不安でいっぱいだと思います。卵子が取れても「ちゃんと受精してくれるのか」、「ちゃんと育ってくれるのか」と毎日気になって落ち着かない1週間を過ごされているのではないでしょうか。そんな中迎える体外受精最後のプロセスである【胚移植】は妊娠という大きな期待とともに、「妊娠するためにできることはすべてやりたい」という思いから少し神経質になりやすい時期でもあります。ですが、当院としてはあくまでも「普通に」通常通りの生活をしていただければ良いと考えていますが、以前ブログでもご紹介したように少し縁起を担いでみるのもいいかもしれません。
≫胚移植では気持ちも前向きに
話は変わりますが、胚移植の際に「尿溜めは必要ですか」とか「移植後は安静にした方がいいですか」といった質問を受けることがあります。 当院の胚移植は経膣超音波ガイド下にて行いますので、尿溜めは必要ございませんし、移植後の安静時間も設けていません。このように説明しても気にされる方もいらっしゃるかと思いますので、論文を1つご紹介したいと思います。
Interventions to optimize embryo transfer in women undergoing assisted conception: a comprehensive systematic review and meta-analyses
これは胚移植における様々な介入が妊娠率に影響するかどうかを検討したメタ分析のレビューです。
内容は割愛しますが、超音波ガイドによる胚移植、ソフトカテーテルを使用した胚移植、高濃度ヒアルロン酸含有培養液による胚移植で妊娠率が改善されると結論付けています。この論文では尿溜めや胚移植後の安静についても言及されており、尿溜めは妊娠率に影響しないこと、胚移植後の安静は妊娠率の低下を招く可能性があることが示されています。
これはあくまで1つの論文の結果ですので必ずしも正しいとは言い切れない部分もありますが、メタ分析のレビューであるという点において、エビデンス(科学的証拠)レベルは高いと考えます。
ご興味があればご一読ください。
ちなみに当院は超音波ガイド、ソフトカテーテル、高濃度ヒアルロン酸含有培養液すべてを使用し、胚移植を実施しています。