不妊治療の検査 ~TSHについて~

皆さんこんにちは。

今回は不妊治療の検査についてお話ししたいと思います。

TSHというホルモン検査についてですが、
不妊症や不育症にも関連があるため、当院ではスクリーニング検査項目の一つになっています。

TSHとは、
脳下垂体から出ている甲状腺刺激ホルモンです。

甲状腺という、首の下部にある臓器に働きかけ、血液中の甲状腺ホルモンの量を調整しています。

血液中にちょうど良い量の甲状腺ホルモンが存在することで、人は快適な生活を送れます。

甲状腺の働きは大きく分けて3つの働きがあります

➀新陳代謝を高める
 脂肪や糖分を燃やして活動のためのエネルギーをつくります
②交感神経を刺激する
 体の緊張を促し活発にします
③成長を促す
 胎児や子供の体の成長や発達を促します

TSHの値が高値であれば、
血液中の甲状腺ホルモンが少ない甲状腺機能低下症が疑われ、

TSHの値が低値であれば、
血液中の甲状腺ホルモンが多くなっている甲状腺機能亢進症が疑われます。

甲状腺機能低下症の症状
:脈が遅い・寒がり・体重増加・便秘など

甲状腺機能亢進症の症状
:脈が速い(ドキドキする)・暑がり・汗かき・手足の震え・体重減少など

また、
体のだるさや疲れやすいなど共通した症状がみられることもあります。

甲状腺の疾患は男性に比べ、女性に多くみられ、
上記のような症状のない無症状の人でも、検査をして初めて甲状腺の病気が発覚するという場合もあります。

甲状腺と不妊治療・妊娠への影響

甲状腺ホルモンは卵胞発育にも影響しています。

甲状腺ホルモンのバランスが悪い状態だと、
排卵障害や月経不順・無排卵・無月経などが起きやすくなり、
不妊の原因になることがあります。

妊娠中になると、
特に妊娠初期には胎児は自分で甲状腺ホルモンを作ることができないため、
母体からの甲状腺ホルモンが必要になります。

甲状腺ホルモンの不足は胎児の成長や発達に影響します。

また、
妊娠中に甲状腺ホルモンのバランスが悪い状態だと、
流産や早産・子宮内胎児発達不全を起こす危険性が高くなり、
母体においては妊娠高血圧症候群を起こすことがあります。

甲状腺機能亢進症の方は、産後に悪化することもあります。

このように、
甲状腺ホルモンの働きは不妊治療・妊娠・出産において、
ご自身や妊娠中には赤ちゃんへの影響が大きいため、
検査で異常がないかを調べることは必要です。

もし検査結果の数値により甲状腺疾患が疑われる場合は、
専門医にご紹介しています。

受診していただき、
治療が必要か判断していただきます。

甲状腺ホルモンの調整のため内服治療が必要になった場合でも、
状態が落ち着けば甲状腺の治療を継続しながら並行して不妊治療を再開できることがほとんどです。

また、
妊娠されてからもホルモンのコントロールは重要です。

定期的な検査は必要になると思います。

適切な治療を受けることで安心して不妊治療、妊娠に備えていきましょう。