みなさん、こんにちは。院長の園田です。
いよいよ12月、師走に突入ですね。
その前にクリスマスという心躍る嬉しいイベントもあります。
皆さんは、パートナーの方や、ご家族の方にどんなプレゼントを用意されるのでしょうか?
また、どんなクリスマスを過ごされるのでしょうか?
街にはクリスマスソングが流れ、キラキラと華やかな雰囲気になってきました。
皆さんにとって、最高のHappy Merry X’masになることを願います。
先日、鳥取県米子市で第66回日本生殖医学会が開催され、スタッフ3人で参加してきました。
久々の現地参加での学会でしたので、
久しぶりに誰に会えるのだろう、いろいろな人とお話しできるだろうかと楽しみにしながらの道中でした。
情報交換は日々の診療の改善に繋がる貴重な時間ですので、
画面越しではなく、対面での方が私は有意義になると思っています。
また、若いスタッフにとっても、多くの人との交流はとても良い刺激になり、
より良い診療を提供できる新しい発想や発見の宝庫と言えます。
今回の学会は、4月から始まる不妊治療の保険適応の話や、着床前診断(PGT-A)についての演題が多かったように思います。
今後はもっともっとこのような場が以前のように開催され、生殖医療が大いに盛り上がることを期待します。
ところで、今回の私たちの米子までの交通経路ですが、
岡山まで新幹線で行き、岡山からは“特急やくも”に乗り換えました。
“特急やくも”は中国山地山間部を走る列車で、
乗り心地としてはよく揺れて酔ってしまう人も多いことで有名ですが、
三半規管が並はずれて強い私は全く酔うこともなく、
車窓からは、清流沿いに山の紅葉を見ることができ、ゆったりとした時間を過ごすことができました。
学会では、当院からも5題の演題発表を行いました。
私は、
「カベルゴリン、レルゴリクスによるOHSS対策効果 ~いかにOHSSを軽減させるか~」
という演題を発表しました。
学会でも発表しましたが、
今回のブログは卵巣過剰刺激症候群(OHSS:ovarian hyperstimulation syndrome)についてです。
生殖補助医療ARTにおいては、
内服薬や注射薬使用による調節卵巣刺激において、
OHSSは、時には重篤な状態を引き起こす可能性のある注意すべき合併症のひとつです。
薬剤を用いない自然周期採卵では、
1ヶの採卵を目指すため、OHSSが起こることはないのですが、
少ない採卵数では、妊娠という結果に繋がるまでに複数回の採卵が必要となることも多くなります。
当院では、妊娠の可能性を高めるため、また将来の二人目の妊娠も見据え、
できるだけ少ない採卵回数で複数の卵子を獲得することを目的として、
薬剤を使用していくことがほとんどです(卵巣刺激法について)。
その場合には、程度の差はありますが、
OHSS発症は不可避となることも多いのが現状です。
しかし、そのOHSSも薬剤を上手に使用することにより、
重症化を予防したり、軽減したりすることができます。
そのOHSSの重症化予防、および軽減を目的として、
当院では、カベルゴリン(カバサール)、レルゴリクス(レルミナ)という内服薬を使用しています。
OHSS悪化にはVEGF(vascular endotherial growth factor:血管内皮細胞増殖因子)という、
血管新生を増殖する因子が関係しています。
カバサールは、母乳を出すホルモンであるプロラクチンが高い方に用いる薬剤ですが、
VEGFを抑制する作用がありますので、OHSSの重症化予防、軽減に有効な薬剤です。
卵胞発育が進むと血中のエストロゲン値が上がります。
複数の卵胞が発育してくることで、更にエストロゲンは上昇しますが、
このエストロゲンは先ほどのVEGFの発現を増加させるため、
OHSS軽減には速やかなエストロゲンの低下が必要になってきます。
レルミナは、エストロゲンを下げる作用があるため、OHSSに有効な薬剤です。
この二つの薬剤を使用することで、採卵後の月経開始が早まります。
採卵後に月経が開始するとOHSSは改善してきますので、
月経が早く来るということはOHSSの改善が早いということです。
不妊治療は年齢勝負という避けられない現実があり、
妊娠できる時期には限りがあることを考えると、やはり2人目も見据えた人生設計を考えながら治療を進めることが、現在の女性のライフプランにおいて重要になると考えます。
また、不妊治療の長期化は心身ともに疲弊をきたしますので、
なるべく少ない採卵回数で良い結果に繋がることができたら理想的だと思います。
少ない採卵回数で多くの卵子を獲得することで妊娠の可能性を上げながら、速やかにOHSSを軽減させる。
不妊治療においては、バランス良く治療することがとても大事です。
バランスの良い治療は妊娠への近道に繋がり、当院のモットーである“身体もこころも健康な妊婦として送り出す”ということそのものだと考えます。
そのために、私たちは日々試行錯誤しながら診療に臨んでおります。
生殖補助医療ARTにおける卵巣刺激法やさまざまな薬剤の選択、使用の仕方は日々進化しております。
今後も工夫や改善を図りながら、より良い治療を行っていきたいと思います。
院長 園田桃代
3件のコメント
コメントは停止中です。