~凍結融解胚移植と周産期リスクを考える~

みなさん、こんにちは。院長の園田桃代です。

11月中旬となり、秋真っ只中という季節になりましたね。

今年の紅葉具合はどうなっているのでしょうか?

紅葉を見ながら温泉にでも入りたいな~と毎年思っているのですが、気付いたら季節が過ぎてしまい・・・ということをずっと繰り返してしまっています。

今回は、凍結融解胚移植と周産期リスクについて、お話します。

生殖補助医療ARTにおける凍結融解胚移植は大変重要な治療法の一つであることはご存知の方も多いかと思います。
現在、日本でART治療により出生した児の93%が凍結融解胚移植により妊娠した子どもです(下記グラフ参照)。


以前のブログでもご紹介しましたが、着床環境を整えること、より良い子宮内膜を作っていくための方法は大きく分けて以下の2つがあります。

ホルモン補充周期凍結融解胚移植
その名の通り、ホルモン剤を使用することで子宮内膜を作っていく方法です。使用するエストロゲン剤としては、エストラーナやルエストロジェル、ジュリナ等になります。子宮内膜が厚くなり、血液中のホルモン値が問題なければ、黄体ホルモン剤を追加し、胚移植日を決定していきます。

排卵周期凍結融解胚移植
こちらは、ご自分の排卵周期を利用し、体内のエストロゲン値が上がることで自然に子宮内膜が厚くなり、排卵後の黄体(卵胞が排卵すると黄体になります)からのホルモン分泌により着床準備ができた時期に胚移植する方法です。

それぞれに一長一短があり、最近はホルモン補充周期で、周産期リスク、妊娠時の血圧の問題(妊娠高血圧症候群)や分娩時の出血が増える可能性(癒着胎盤等)の報告もあり、排卵周期凍結融解胚移植にて治療される方も増えています。

それでは、ホルモン補充周期における周産期リスクの発生割合はというと、妊娠高血圧症候群で6-10%、癒着胎盤が3-6%と言われています。当院での発生割合は下のグラフにお示しします結果で、他の報告と同じような数値が出ております。

これを見ると、ではホルモン補充周期をやめて、みんな排卵周期にすればよいと思われるかもしれませんが、そうはいかないのが現状です。

その理由としては、多嚢胞性卵巣症候群PCOSなど月経周期が不順な方や、年齢等による黄体機能不全がある方、昨今の社会事情を反映し仕事との両立により通院に制限がある方などは、排卵周期が適さず、ホルモン補充周期を選択せざるを得ない場合があります。

また、排卵周期を何回か試してみて結果が出ず、ホルモン周期に変更し妊娠成立したという方もたくさんいらっしゃいます。

どちらがその方のより良い着床環境を作れるのかは、なかなか事前には分からないことも多いため、同じ方法ではなく、別の方法を選択するというのも治療法の見直しにおいては大事なことです。

妊娠率に関してはどちらも変わりはありません。

不妊治療において100%正しいという治療法の判断は難しいことも多いのが現状です。その方の月経周期やそれまでの治療過程における卵胞発育、排卵周期のエコー検査で得られた情報やホルモン値などを診て、治療法の提案をしてまいります。

また周産期リスクについては、患者さん自身も理解しておいていただく必要があるかと思います。妊婦健診先に宛てての紹介状にも治療内容について記載しておりますので、情報は共有できており、日本の周産期医療は世界一だと思いますので、むやみやたらに怖がる必要は決してありません。

みなさんが健康な妊婦として卒業し、健やかな妊娠、分娩経過を経て、元気なお母さんになれるよう、ともに頑張っていきましょうね。

                                                                                       院長 園田桃代