喫煙による妊娠への影響

こんにちは。今回は喫煙による妊娠への影響についてお話します。

【女性の喫煙による妊娠への影響について】

卵子の質の低下

 喫煙による酸化ストレスはミトコンドリア機能低下やDNAダメージ等卵子の質の低下を引き起こします。また、酸化ストレスは流早産や胎児発育不全の原因にもなります。

②卵巣予備能の低下

 喫煙女性はFSH(卵胞刺激ホルモン)値が有意に高値であり、黄体期のプロゲステロン濃度が低くなります。卵巣機能不全や黄体機能不全のリスクが高くなります。AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能)も有意に低いと報告があります。 

③受精卵の輸送障害

 受精卵の子宮腔内への輸送の遅れは、子宮内膜の適切な胚受容時期(着床の窓)とズレを生じさせ、着床を妨げます。また、受精卵の輸送障害は異所性妊娠のリスクを増加させます。

④子宮内膜受容能の低下

 米国での卵子提供をもとにした研究(Soaresらによる)では、ドナーの喫煙状況に関係なく、レシピエントが喫煙者である場合、妊娠率の低下が報告されています。この結果、喫煙が胚の質だけでなく、子宮内膜の受容能に影響を与えていると考えられます。

上記の結果より、喫煙女性は非喫煙女性に比べ、不妊症となるリスクが1.6倍に及ぶと報告があります。(Augoodらによる12の研究をもとにしたメタ解析より)

喫煙女性は非喫煙女性に比べ、妊娠率が0.56倍、出生率が0.54倍と有意に低くなります。一方、流産率は2.56倍、子宮外妊娠率は15.69倍と有意に高いとの研究結果がでています。(Waylenらによる21の研究をもとにした胚移植の成績より)

また、妊娠ができたとしても、胎児発育不全のリスクが高く、赤ちゃんが低体重や早産になる可能性が高くなるため、妊娠中も継続して禁煙が必要です。

【男性の喫煙による妊娠への影響について】

喫煙男性は非喫煙男性に比べて、

 精子濃度が9.72×10⁶/ml、運動率が3.48%、正常形態率が1.37% 低い

と報告があります。(Sharmaらによる20の研究のメタ解析より)

精索静脈瘤を保有している場合、喫煙者は非喫煙者に比べて乏精子症を発症する割合が10倍高くなる可能性が報告されています。

(Klaiber EL,et al:Interrelationships of cigarette smoking,testicular varicoceles,and seminal fluid indexes.Fertil Steril,47:481-486,1987)

また、精子運動率と正常形態率が同等であった場合でも、体外受精と顕微授精の妊娠率は非喫煙男性に比べ喫煙男性が有意に低くなります。

この結果より、喫煙習慣のある男性が一般的な精液所見が正常の場合でも、自然妊娠や体外受精での妊娠の可能性が非喫煙男性に比べて低い可能性が示唆されます。

喫煙は不妊の原因になるだけでなく、妊娠できた場合でも流産率の上昇や胎児発育不全のリスクが高いなど胎児への影響が大きいです。男女ともに喫煙習慣の改善=禁煙を妊活中はもちろん、将来の妊娠を考えた健康管理としても非常に大事なことです。喫煙習慣のある方が禁煙することは簡単なことではないかもしれません。少しずつタバコの量を減らす、パートナーと一緒に禁煙に取り組む、禁煙外来を活用してみる、などして禁煙に取り組んでいきましょう。