「胚培養士」ってなに?

こんにちは、培養室です。
8月22日、23日に大阪国際会議場で開催された第42回日本受精着床学会に参加してきました。

今回も例年通り院長と看護師、胚培養士がそれぞれ日ごろの診療を通して得た知見について口頭発表を行い、聴衆からの質問に対しても適切に回答でき、それぞれ満足のいく発表ができたと思います。
今後も積極的に学会に参加し、発表していくことで日々の診療レベルを上げ、患者様により良い医療を提供できるように頑張ります。
≫過去の学会発表の内容について

ところで、「胚培養士」とはどのような職業なのかご存じでしょうか。

当院のような不妊治療専門病院に通院されている方なら知っている方も多いと思いますが、一般の方はもちろん、一般の婦人科で不妊治療をされている方も知らない方が多いのではないでしょうか。

胚培養士の仕事内容は主に「精子や卵子を扱い受精させて、受精卵をお母さんのお腹にお戻し(移植)するまで大切に育てる」ことです。
体外受精などのいわゆる生殖補助医療と言われる医療行為において、この胚培養士の存在は今やなくてはならない必須の存在と言えます。

それにも関わらず知名度が低い原因の一つは国家資格ではないからだと考えます。

実は胚培養士は学会が認定する認定資格であり、全国に2000~3000名ほどしかいない貴重な存在です。
現在、生殖補助医療の大部分が保険適用となっており、その生殖補助医療を担う胚培養士の標準化を目指して国家資格とすべく学会等が精力的に国に働きかけているようです。

胚培養士の知名度が低いもう一つの原因は、普段の診療において医師や看護師と違い患者様と接する機会が少ないためではないでしょうか。
多くの施設では胚培養士は培養業務に集中し、患者様が目にする機会は受精卵をお腹にお戻しする「胚移植」の時だけのことが多いです。
胚移植のほんの一瞬だけ見かけた「採卵から胚移植まで自分たちの受精卵を大切に育ててきた胚培養士」を覚えている人は少ないでしょう。

一方、当院の胚培養士は普段の診療から積極的に患者様と接する機会を設けています。
具体的には精液検査の結果説明、人工授精前の説明、体外受精のインフォームドコンセント、胚培養結果の説明、胚移植前の説明、そのほか各種セミナーなどで患者様の前に立っています。
その理由は自分たちの精子や卵子、受精卵を扱っている人がどのような人たちなのか、実際に見て話してもらうことで信頼して安心して頂けるのではないかと考えているからです。

また医師や看護師が精液検査の結果を説明したり、胚培養結果の説明をしたとしても実際に見たわけではなく、カルテに記載されている内容を説明しているだけということが多いです。
当院は実際に胚培養士が見たリアルな結果を具体的に説明するということをとても重要視しています。
ですので、胚培養士からの説明で分からなかったことや疑問に思ったことなど、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。

説明を受けているときには特に質問はなかったけど、帰宅して夫婦で話してたら疑問が出てきた、なんてこともあるかと思います。そんな時はぜひ胚培養士外来をご活用ください。

そんなわけで今回は今更ながら胚培養士を取り上げてみました。
胚培養士をテーマにした漫画も発売されていますので、これを機に胚培養士の知名度を上げていければと思います。