こんにちは。培養室です。
今回は、培養室で使用している機器のひとつである、
「spindle view(紡錘体可視化装置)」について紹介させていただきます。
当院では、顕微授精を実施する際、
顕微鏡に設置したspindle viewという装置をもちいて
卵子の「紡錘体」の位置を確認した上で実施しています。
紡錘体とは、成熟した卵子にみられる構造体で、
細胞が分裂するとき、2つに分かれる細胞それぞれに染色体を分配する機能をもちます。
↑ 紡錘体の模式図
通常、紡錘体は下の図のように、
卵子の「第一極体」のすぐそばにあると言われています。
第一極体は、卵細胞のすぐ外にあります。
ちなみに、顕微授精は成熟した卵子にのみおこなうことができますが、
卵子の成熟確認は、この第一極体の有無で判別します。
通常の顕微鏡だと紡錘体は見ることはできませんが、
spindle viewを設置した顕微鏡だと、上の図のように観察できます。
この紡錘体を顕微授精の過程で傷つけてしまうと、異常受精や分割不良など、その後の受精卵の成長に悪影響が出てしまいます。
そのため、顕微授精を実施する場合は、第一極体を目印にして、そこから離れた位置に針を刺して顕微授精をおこまいます。
しかし、一部の成熟卵子(約3割)では、下の図のように、第一極体とは離れた位置に紡錘体があることがあります。
そのため、当院では顕微授精によって紡錘体を傷つけることがないように、
spindle viewによって紡錘体位置を確認しながら、顕微授精を実施しています。
spindle viewを用いて紡錘体位置を確認した上で顕微授精を実施した場合、そうでない場合に比べて、
受精率、胚盤胞到達率、良好胚盤胞率が優位に高かった、という報告があります。
(K Hiraoka et al, Fertil Steril 2019)
特に、1回の採卵でとれる卵子の個数が少ない患者さまにとっては、卵へのダメージを最小限にして確実に受精させることは非常に重要かと思います。
受精方法や胚培養について、何かわからないことや気になることがございましたら、
ぜひ培養士外来を、ご活用ください。