こんにちは。培養室です。
当院では、
通常の精液検査に加えて、「精子の質」を調べる検査として、高度精子機能検査を実施しております。
高度精子機能検査では、「精子DNA断片化検査」や「精液中酸化ストレス測定」を行います。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
(関連記事)≫精子の質を調べてみませんか? ~精子DNA断片化検査と抗酸化力検査~
今回は、「精子DNA断片化検査」について、お話ししたいと思います。
精子DNA断片化検査とは
精子のDNAの断片化率を調べる検査で、いわゆる「精子の質」を調べることができます。
喫煙、飲酒、加齢、高熱、精索静脈瘤、酸化ストレスなどのダメージが影響すると言われています。
精子のDNA断片化は、受精後3日目以降の胚の発育に悪影響を及ぼす、ということが知られています。(Jan Tesarik et al, Hum. Reprod 2004;19:611)
つまり、精子の断片化は、
胚の発育不良、妊娠率の低下、流産率の上昇に関わる、ということになります。
DNAの断片化率が25%未満であれば、
自然妊娠や人工授精によって妊娠の可能性が高いが、
DNAの断片化率が25〜30%を超える患者は体外受精に移行すべき、という報告もあります。(Evenson et al, Fert and Steril 2020)
そのため当院では、DNAの断片化率25%以上の場合、体外受精へのステップアップを含めた治療方針の検討や、生活習慣の見直しをおすすめしております。
当院のデータ
当院では、昨年よりこの検査を開始し、これまで200名以上の方が希望されました。
下のグラフは当院で精子DNA断片化検査を受けられた方の結果の内訳です。
精子のDNAの断片化率は、以下の4段階のグレードに分けています。
グレード | 断片化率 |
A | 0-15% |
B | 15-25% |
C | 25-30% |
D | 30%- |
上のグラフにある通り、断片化率25%以上のグレードC以上だった方は、当院で精子DNA断片化検査を受けられた方のうち11.9%でした。
また、グレードC以上だった方のうち、約半数は通常の精液検査では「正常精液」だった方であったため、精液検査の結果が良かったからといって、「精子の質」も良いとは限らないということがわかりました。
DNAの断片化率が高い場合
・体外受精へのステップアップを検討する
・精索静脈瘤があれば手術を検討する
・喫煙をしていれば禁煙する
・禁欲期間が長ければ5日以内に
・適度な運動習慣を取り入れる
・抗酸化サプリメントの服用
以上のようなことが推奨されます。
「精子の質」を調べたいという方は、通常の精液検査と合わせて「高度精子機能検査」も検討して頂けたらと思います。
その他、精子に関するご相談などがありましたら、いつでも培養士外来をご利用いただけますと幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。