こんにちは。培養室です。
今回は、男性不妊とその治療に使われる漢方薬について、お話しさせて頂きます。
男性不妊の原因は、
造精機能障害の割合が最も多く、全体の約9割を占めています。
造精機能障害は、乏精子症、精子無力症、無精子症
などを含みます。
造精機能障害の原因としては、
前立腺炎、精嚢腺炎、睾丸(精巣)炎、停留精巣、先天性疾患、精索静脈瘤
などといった泌尿器科的な要因もありますが、
そのほかにも、
食生活や睡眠不足、ストレスなど、身体の状態が精子と強く関わっていることが知られています。
当院の男性外来では、
エコーや触診での検査から泌尿器科的な異常がみられなかった場合は、
補中益気湯という漢方薬を処方させて頂いています。
補中益気湯は、
幅広い症状の改善に使われている漢方薬の1つです。
食欲が湧かない、体が疲れやすく気力が出ない、体調を崩してしまい中々回復しないといった人の症状改善に使用されます。
漢方によって体調を整えることで、精子をつくる機能を改善させることを目指してします。
補中益気湯の精子に対する有効性を調べた報告
実際に、補中益気湯の内服がどれくらい精子に効果があるのか調べた報告をご紹介します。
不妊男性45名(平均年齢32.8歳)を対象に、
補中益気湯を3-5ヵ月間服用してもらい、
精液量・精子濃度・精子運動率を服用する前と後で比較することで、
服用による精子への効果を調べています。
(『補中益気湯の臨床的効果について』昭和大学医学部泌尿器科学教室 吉田英機)
精液量は、服用前と比べて変化はありませんが、
精子濃度と精子運動率の増加がみられました。
当院でも補中益気湯の有効性を調べました
当院でも、同様の検討をおこなってみました。
当院の精液検査から「造精機能障害」と診断され、
補中益気湯を3-5ヵ月間服用された
男性45名(平均年齢36.7歳)を対象に、
精液量・精子濃度・精子運動率を服用前と服用後とで比較しました。
さきほどの報告と同様に、
精液量には変化が見られませんでしたが、精子濃度、精子運動率の増加がみられました。
効果には個人差がありますが、
上記のデータから、補中益気湯の長期的な服用は精子の運動率や濃度を改善させる効果があることがわかります。
服用を始められた方は、根気よく服用を続けることをおすすめします。
男性不妊治療の為の漢方薬については、男性外来でご相談ください。
当院で治療中の方は、保険で処方をすることが可能です。
その他、精子に関するご相談などがありましたら、
いつでも培養士外来をご利用ください。