こんにちは培養室です。
今まで先進医療のPICSIやERAについて触れてきましたが、
今回はSEET法についてのお話です。
【これまでブログで紹介した先進医療】
PICSI~ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術~
着床不全の原因
体外受精をされている患者様の中には、
形態的に良好な受精卵を複数回移植しているにも関わらず、
妊娠に至らない着床不全の方が存在します。
着床不全の原因は主に、
①受精卵側の原因
②母体側の原因
③子宮内膜と胚の相互作用の問題
とされています。
①受精卵側の原因
着床不全の主な原因は受精卵の染色体異常とされています。
女性は加齢とともに受精卵の染色体異常の割合が増加することが知られています。
前回、院長がこの受精卵の染色体異常を調べる検査について触れていますので、ご興味がある方はご一読ください。
しかし、
PGT-Aは現在保険適用外の検査のため、
採卵から胚移植に係るすべての治療費が全額自己負担となります。
着床不全の主な原因は受精卵の染色体異常であるにも関わらず、
保険で胚移植ができる方にとってはハードルが高い検査です。
②母体側の原因
着床不全の原因となる母体因子は、
子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜症、子宮奇形、卵管水腫などが挙げられます。
そのほかに抗リン脂質抗体症候群、甲状腺機能異常、血液凝固因子などが考えられていますが、原因不明なものもあります。
当院の着床不全検査はこちらにまとめております。
③子宮内膜と受精卵(胚)の相互作用の問題
エストロゲンやプロゲステロン、または胚因子の刺激に対する子宮内膜の反応異常に起因する胚受容能の異常が考えられています。
この考え方では子宮内膜と胚の双方向のクロストークが重要とされています。
二段階胚移植法やSEET法はこの考え方に基づいた治療法です。
二段階胚移植法
二段階胚移植法とは適切な時期に初期胚を移植し、
その2日後に胚盤胞を移植する方法で、先進医療にも認定されています。
最初に移植する初期胚により、子宮内膜を刺激し胚受容能を高めることで後に移植する胚盤胞の着床率を高めることができると考えられています。
一方で、
初期胚と胚盤胞を2個移植することになるため、多胎妊娠のリスクが増加するという問題があります。
この問題を解決する方法としてSEET法が考えられました。
SEET法
近年、
受精卵を培養している培養液中に子宮内膜の胚受容能促進に関与する胚由来因子が存在することが報告されました。
そこで、
二段階胚移植において最初に移植する初期胚の代わりにこの培養液を子宮腔内に注入し、子宮内膜を胚受容に適した環境に整えたのち、胚盤胞を移植するSEET法が考案されました。
具体的な方法
①体外受精または顕微授精により作出された受精卵を5~6日間培養し、良好胚盤胞を凍結保存します。
②同時に、凍結した良好胚盤胞を培養していた培養液を別の容器に凍結保存しておきます。
③別の周期に凍結融解胚移植のスケジュールを開始します。
④移植に適した子宮環境になったら黄体補充を開始します。
⑤黄体補充開始3日後に凍結していた培養液を融解し、子宮腔内に注入します。
⑥黄体補充開始5日後に凍結していた胚盤胞1個を移植します。
SEET法の適応
先進医療におけるSEET法の適応は、厚生労働省から
「不妊症(卵管性不妊、男性不妊、機能性不妊又は一般不妊治療が無効であるものに限る。)」
とされています。
これはつまり、体外受精を受けられている方はすべて対象になるわけですが、
当院では、必要に応じて担当医からご紹介いたします。
ご理解くださいますようお願い致します。
また、ご相談などあればいつでも培養士外来やナース面談をご利用ください。