こんにちは。培養室です。
今回は、精子の質の検査についてお話ししたいと思います。
以前のブログにもあるように、11年ぶりにWHOの精液検査の基準値が改訂されました。【重要】精液検査の基準値が変わりました
基準値は前回と大きく変更された箇所はありませんが、
新しい評価項目として、「精子DNA断片化検査」や「精液中酸化ストレス測定」などの精子の質を検査する項目が加わりました。
精子の質も重要視されるようになったということがわかります。
精子は喫煙、飲酒、加齢、高熱、精索静脈瘤、酸化ストレスなどのダメージでDNAが損傷すると言われています。
精子のDNAの損傷(断片化)の割合が多いと自然妊娠や人工授精による妊娠の可能性が低くなることや、流産率が高くなることが報告されています。
また、体外受精における受精率や妊娠予後が悪くなってしまうとも言われています。
一般的な精液検査では精液量、精子濃度、運動率、正常形態率を調べていますが、精子の質まで調べることができません。
そこで高度精子機能検査として、精子DNA損傷検査と、抗酸化力検査があります。
精子DNA損傷検査
DNAが損傷している精子の割合や未熟な精子の割合を測定します。
正常、未熟、損傷の違いで異なる色に染め分けています。
赤枠内にある点の割合が多いほど、DNAが損傷している精子(DFI)が多いことを示しています。
DFIの割合が高いと、一般不妊治療よりも体外受精、体外受精よりも顕微授精の方がより良い結果が得られることが報告されているため、治療方針の更なる検討材料となります。
抗酸化力検査
酸化ストレスへの抵抗力(=抗酸化力)を測定します。
酸化ストレスは精子DNA損傷の原因の一つと言われており、酸化ストレスをゼロにすることは困難なため、酸化ストレスのダメージを抑えるために抗酸化力が必要とされます。
抗酸化力が低かった場合は、生活習慣の見直しや抗酸化サプリの摂取によって改善されることが報告されています。
このような高度精子機能検査は、以下のような方にお勧めしております。
・原因不明のまま6か月以上不妊治療をしている
・流産歴がある
・人工授精、体外受精、顕微授精で迷っている
・40歳以上
・喫煙している
・疾患がある、薬を服用中である
・2か月以内に高熱が出ている
・生殖器の感染症の既往がある
・精索静脈瘤の治療を検討している
不妊原因の約半分は男性側にも原因があるといわれている昨今、
女性側だけが検査するのではなく男性側も積極的に検査することが大事になってくるのではないかと思います。
精液検査と同時に実施する検査になります。
実際の詳しい検査の流れや費用は当院にてご相談ください。