こんにちは。培養室です。
今回は精液検査の基準値変更のお知らせです。
当院で使用している精液検査の基準値は、WHOの基準値を採用しています。
そのWHOの基準値が今年の7月に、11年ぶりに改訂されました。
この改訂に伴い、当院では9月1日以降に精液検査を受けられた方を対象に、新基準による検査を実施しています。
通院中の方の中には、突然基準値が変更になり、戸惑われる方もおられるかと思いますが、今回の基準値の改訂は治療方針に大きく影響するような数値ではありませんので、ご安心ください。
さて、この機会に精液検査の基準値とはどのようなものなのか、詳しく説明したいと思います。
上の表は避妊具を使用しないで12か月以内にパートナーが妊娠した男性の精液検査データを参考に作成されています。
以前の基準値は欧米の男性の精液検査データしか参考にされていませんでしたが、今回の新基準では、中国、エジプト、イランといったアジアやアフリカの男性のデータも含まれるようになりました。
精液検査の基準値は、このデータの5パーセンタイル値をとっています。
5パーセンタイル値とは
例えば、1から100まで100個のデータがあるとします。
これを小さい方から順に並べます。
1 2 3 4 5 6 …… 95 96 97 98 99 100
このときの下から5%に当たるデータが5パーセンタイル値です。
つまりこの場合の5パーセンタイル値は「5」ということになります。
では、改訂された新しい精液検査の基準値である5パーセンタイル値を以前の基準値と比較してみましょう。
この基準をすべてクリアしていれば正常精液ですが、精子濃度が基準を満たしていなければ「乏精子症」、運動率が基準を満たしていなければ「精子無力症」、正常形態率が基準を満たしていなければ「奇形精子症」となります。
基準値はあくまで「自然妊娠できる必要最低限のデータ」です。
基準値が12か月以内にパートナーが妊娠した男性の精液検査データを参考に作成されたことからもわかるように、基準値を下回っていたとしても自然妊娠できる可能性はあります。
逆に、基準値以上だったとしても、妊娠を保証するものではありません。
妊娠には女性パートナーの要因が大きく影響します。
また、精液所見もその日の体調の変化によって変動します。
したがって、精液検査データはあくまで「目安」と考えてください。
しかし、精液検査結果が極端に悪い場合は、女性パートナーの検査結果に関わらず、治療方針が大きく変わる可能性があります。
つまり、精液検査データは治療方針を考えるうえで重要なカギなのです。
精液検査を受けてみましょう
精液検査は男性不妊を調べることができる最も簡単な方法です。
初診でお越しの際は、なるべく早い段階で精液検査を受けましょう。
結果によっては女性パートナーの検査を省く必要が出てくる可能性があります。
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男性外来について
不妊治療はご夫婦そろって行うべきと考えています。
そのため、当院では男性の方にも初診時には男性外来への受診をお願いしています。
男性不妊に詳しい男性の泌尿器科医師が診察しますので、心配なことや不安に思っていることがあれば、お気軽にご相談いただけます。
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最後に
精液検査と聞いて、身構えたり、躊躇される男性の方は少なくありません。
良くない検査結果を聞いて傷付きやすい方は、意外にも男性に多いのです。
しかし、女性は妊娠できる期間が限られています。
パートナーの妊娠の機会を1周期でも逃さないために、パートナーの気持ちに寄り添い、ぜひ一緒に妊活を始めましょう!
胚培養士 小林