みなさん、こんにちは。
今回は培養室から、正常受精と異常受精についてご説明します。
当院では、体外受精の翌日、
卵が正常に受精しているかどうかの確認を行います。
この時、
正常に受精していれば、
下図に示すように父親の遺伝情報を持った精子由来の前核が1つと、
母親の遺伝情報を持った卵子由来の前核が1つの、
合計2つの前核が確認出来ます(2前核胚)。
しかし、
胚によっては前核の数が1個(1前核胚)しかないものや、
3個以上(3前核胚)存在するものもあります。
2前核以外の胚がすべて異常受精であるとは限りませんが、
この時点で3前核以上の胚に関しては、
染色体異常の確率が高いことから、全て異常受精と判断させて頂いています。
一方で、1前核胚に関しては、
近年の研究から、胚盤胞まで成長すれば2前核胚同様の妊娠率・流産率が報告されている為、
当院では必ず5日目まで培養を行った上で正常か異常かを判断させて頂いています。
それぞれの原因としては、
【1前核胚の場合】
① 卵子と精子が正常に受精せずにどちらか一方のみが前核を形成した可能性
② 受精はしているがどちらか一方のみが前核を形成した可能性
③ 2つの前核が重なっていた可能性
【3前核胚の場合】
① 精子側か卵子側あるいは双方に原因があり前核が2分割化した可能性
② 一般体外受精であれば精子が多数侵入した可能性
などが考えられます。
いずれにしても、
2前核でない胚が形成されるというのは、
精子側もしくは卵子側の質の低下または未熟であったことが関係していると言われています。
卵子・精子の質は加齢による影響が大きいとされていますが、
他にも心理的ストレスや生活習慣の悪化なども影響します。
昨年から続く自粛生活により、
仕事や生活に変化が生じ、心や身体に不調を感じられた方も多いかと思います。
そんな時は一人で考え込まずに、
お気軽に当院スタッフにご相談下さいね。
培養室でも少しでも正常受精率が上がるよう工夫や改善を行い、患者様がより安心して治療に臨んでいただけるよう努めて参ります。
培養士 森中