今回は培養室にある機器の1つタイムラプスインキュベーターについて紹介します。
タイムラプスインキュベーターの紹介の前にまずは、
インキュベーターについて説明していきます。
インキュベーターは体外受精において必須の機械です。
自然妊娠では、受精卵は女性の体内で育っていきますが、
体外受精では女性の体内から卵子を採取して体外で受精させます。
その後、受精卵はインキュベーターの中で成長させていきます。
そのため、インキュベーターは女性の体内の代わりになっています。
インキュベーターの中は、ガスを流すことで体内と似たような環境(温度37℃、二酸化炭素濃度5-6%、酸素濃度5%)を作り出し、
受精卵にとって最適な環境を保っています。
体外受精ではインキュベーターの中で受精卵を育てていきますが、
入れっぱなしというわけにはいきません。
受精卵が順調に成長しているか観察をする必要があります。
観察するには、インキュベーターの外に受精卵を取り出して顕微鏡で見る操作が必要になります。
インキュベーターの外に出すと、温度や空気が違う環境にさらされるので、受精卵にとても大きなストレスがかかります。
観察する度に外に出す必要があり受精卵にとってよくありません。
それを解決するために当院では、タイムラプスインキュベーターを導入しています。
タイムラプスインキュベーターは、普通のインキュベーターとは違い顕微鏡とカメラが内蔵されています。
内蔵されたカメラと顕微鏡を用いて一定間隔で写真撮影を行います。
その写真を用いて受精卵の観察ができます。
そのため、受精卵をインキュベーターの外に出す回数が減り、受精卵へのストレスを軽減し安定した環境で培養することが出来ます。
他にもタイムラプスインキュベーターを用いた培養には利点があります。
タイムラプスインキュベーターは、一定間隔で撮影した写真を繋ぎ合わすことで動画のように受精卵の成長を見ることができます。
このように連続して受精卵の様子を観察することで受精卵の成長過程を今までの顕微鏡を用いた定点観察よりも正確に把握可能となり、従来よりも多くの情報を得ることが可能です。
その情報を基に、より妊娠が期待できる受精卵を選択することができるようになります。
また、当院のタイムラプスインキュベーターには前核を自動で検出するシステムがあります。
前核は、卵子と精子が受精すると出現します。
父親の遺伝情報を持った精子由来の前核1つと、母親の遺伝情報を持った卵子由来の前核1つの合計2つの前核が見えます。
この前核の確認は胚培養士が目視で行っています。
しかし、受精卵の評価に迷う場合があります。この検出システムを用いることで、安定した受精の確認が可能になります。
さらに、タイムラプスインキュベーターの培養に用いる容器には特殊な加工が施されています。
複数の受精卵を同じ培養液で培養すると、受精卵自身が分泌する成長因子が培養液を介して他の受精卵の成長を助けます。
今までの容器では、同じ培養液で複数の受精卵を培養すると受精卵の個別管理が出来ませんでした。
そのため、受精卵ごとに培養液の液滴を作成し培養していました。
タイムラプスインキュベーター用の容器では、微細な穴に受精卵を配置して同一の培養液で覆うことで、個別管理と同一培養液での培養を両立させることが出来ます。
今後ともブログを通して、培養室の情報を発信していきます。
よろしくお願いたします!
4件のコメント
コメントは停止中です。